2002年5月11日更新
自分以外の数で割り切れない自然数のことを素数と呼びます。ちなみに自然数というのは、{1, 2, 3, …}という数のことです。
1は素数?1は特別なので素数じゃないことになっています。まあ些細なことなのでどっちでもいいです。
2は素数です。2以外で割り切れないから。3も素数。
4は素数じゃないです。2で割り切れるから。
5は素数。
6は素数じゃないです。2でも3でも割り切れるから。
7は素数です。
8は素数じゃないです。2でも4でも割り切れるから。
気づいたかもしれませんが、2より大きい偶数は素数じゃないです。
9は素数じゃないです。3で割り切れるから。
気づいたかもしれませんが、3より大きい3の倍数(3に何かを掛けた数)は素数じゃないです。
気づいたかもしれませんが、素数の倍数は素数じゃないです。
素数がどんなものかわかりました?
100までの素数の表を作ってみよう。
下の表を印刷します。
1 |
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3 |
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47 |
48 |
49 |
50 |
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58 |
59 |
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63 |
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65 |
66 |
67 |
68 |
69 |
70 |
71 |
72 |
73 |
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75 |
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79 |
80 |
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83 |
84 |
85 |
86 |
87 |
88 |
89 |
90 |
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92 |
93 |
94 |
95 |
96 |
97 |
98 |
99 |
100 |
2に○をつけます。
2の倍数に×をつけます。
3に○をつけます。
3の倍数に×をつけます。
4は×がついているから飛ばします。
5に○をつけます。
5の倍数に×をつけます。
…
最後まで続けると、○がついた数字が素数です。
数が大きくなると段々素数が減っていきます。
では、素数は最後にはなくなってしまうのでしょうか?
[定理]
素数は無限個ある。
(無限というのはいつまでも数えてもきりがないということです。)
[証明]
背理法で証明します。
背理法というのは、証明したいことと反対のことを正しいとすると、矛盾(つじつまが合わなくなること)が起こることを示す証明方法です。ある仮定が成り立つとするとおかしくなってしまうからその仮定がおかしい、という方法です。
「反対のことを正しいとして、後は本当に正しいことと組み合わるうちにつじつまが合わなくなりました。だから最初に正しいとしたことは間違っていることがわかりました。」という場合、ある数学的な文章は、正しいか、間違っているか(反対が正しいか)、どちらかであると考えてます。この考え方を排中律と言います。実は排中律は正しいとは限りません。数学的な文章ではないですが、わかりやすい例で、
「私は今ウソを言っている。」
という文章が考えられます。さて、「私」の言ったことはウソでしょうか本当でしょうか?本当だと仮定すると、ウソになって、ウソだと仮定すると本当になります。どちらを仮定しても矛盾が起きますね。なんだか頭がおかしくなります(笑)。普段はこういうことは気にせず、背理法を使ってもよいのですが、世の中には上に書いたようなおかしなことがなぜ起こるのか、起こらないようにするにはどうすればよいか研究した人たちがいます。
証明したいことは素数は無限個あるということだから、まず、
素数が有限個である
と仮定します。
今、有限個と仮定したから、素数が小さい順に
{A1, A2, …, An}
と、n個あるとします。(nというのは2個でも3個でも1000個でも1兆個でもいいから具体的な数を書く代わりの記号です。具体的な数の代わりに記号を使うことを「変数」を使うと言います。)
今、素数がAnまでと仮定したので、Anよりも大きな数はすべてA1かA2か,,,Anかどれかで割り切れるはずです。もしどれを使っても割り切れなかったら、それは素数になってしまうから。(ここ、ちょっと難しいです。)
ところが、素数をすべて掛けてから1を足した数字を考えましょう。
A1*A2*...*An + 1
この数は、Anよりも大きな数で、しかも、A1, A2, ...Anどれで割っても1余ります。
Anより大きな数はA1, A2, ..., Anで割り切れるはずなのに、実際には割り切れない数が作れてしまいました。
これは矛盾。
従って、
素数が有限個である。
という仮定が間違っていることが証明できました。
素数は無限個ある。
素数の表を作ると現れ方がばらばらでちょっと不思議な感じがしますね。
それに比べると、偶数(2の倍数)は規則正しく現れるので単純そうに思えます。
ところが、素数を使って偶数を見ると不思議な規則が見えます。
4=2+2
6=3+3
8=3+5
10=3+7
12=5+7
14=7+7
全部、2つの素数の和で表せます。続きを作ってみてください。
さて、
偶数は2つの素数の和で表せる。
は正しいでしょうか。
これは実は、まだ誰にもわかりません。コンピュータを使って、たくさんたくさん計算してまだ間違いが一つも見つかっていないのですが、偶数もまた無限個あるので、その無限個すべてで正しいかどうかはわかっていません。
もし正しいことを証明できたら、その人は人類の歴史に世界的な有名人として名前が残ることになるでしょう。
Copyright © 2001-2002 ICHIKAWA, Yuji